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Interview

一つひとつの作品に込めた愛情は、
必ずお客様に伝わると信じて。

技術開発部 創造工芸室

職人リーダー 木戸口善夫 さん(2000​中途入社)

微笑んでいる木戸口善夫さん

工芸に対する興味から、蒔絵を経て金箔の世界へ

普通高校を卒業後、石川県立輪島漆芸技術研修所で蒔絵を学んだのち、漆工房で修行をしていたそうですね。漆から金箔の世界へ飛び込んだきっかけは何だったのでしょうか。

学生の頃から絵を描くのが好きで、高校時代はサッカー部に所属しながら週に一度、油絵の塾に通っていました。通っていたのは進学校だったもののあまり勉強もしていなかったので就職を検討していたところ、先生がたまたま「輪島に漆芸技術研修所というのがあるぞ」と教えてくれて。それから漆や工芸の世界に興味が湧いて、進学することになりました。


研修所を卒業した後は、蒔絵師の工房に勤め出して修行を重ねていたのですが、あるとき親方を通じて「箔一」からお声がけいただき、ご縁と思って入社することに。その頃はちょうど「漆工房」に空きができたタイミングで、直ぐに中途採用されたんです。

金箔は扱いが難しいからこそ、職人としての腕が鳴る

蒔絵師時代に金粉は扱っていたものの、金箔については触れたことがなかったとのこと。入社後はどのように技術を習得し、またキャリアを築いてきたのでしょうか。

当時の社長からは「箔と漆の世界を確立してくれることを期待しています」という言葉をいただいたのですが、はじめのうちは自由度が高すぎて何をしていいのか全く分からない状態。そんななか、三歳年上の先輩である吉田さんの存在が心の支えとなりました。

 

吉田さんは僕を一切特別扱いせず、先ずは内職周りや物流への納品作業、技術では塗装やスクリーン技術を学ばせていただくなど、幅広い業務に関わる機会を作ってくれました。

 

金箔の面白さに気付いたのもこのタイミングでしたね。金箔は繊細で扱いにくく難しいけれど、使い方によって様々な表情を見せるところが魅力。強く黒光りしたり柔らかく輝いたり、シワが生きたり。金箔を狙った通りに輝かせることは難しいですが、難しいからこそやりがいがあります。

金箔を作っている木戸口善夫さん

創造性が求められる仕事では、情報収集こそが重要となる

現在は創造工芸工房のエキスパートとして活躍しています。仕事の内容や、やりがいを教えてください。

創造工芸工房のメンバーは僕を含めて現在4人。手掛けている商品は幅広く、屏風や掛け軸といった古典的な商品からアートパネルや飾り皿といったインテリアまで様々。自社製品だけでなく、OEMのご依頼をいただいて商品開発から行うこともあります。3名のパートナーさんと役割分担をして、手描き要素が強いものは僕が担当しています。


僕に求められているのは一品物や斬新なアイデアなど、まだ世の中にないものを生み出すこと。だからこそ情報収集は欠かせません。はじめのうちは金箔を使った襖絵や江戸絵画、屏風などを中心に観ていたのですが、そこからどんどん様々なアートに興味が広がっていき、現在では毎週末のように県内外の美術館や博物館、ギャラリーなどに足を運んで現代アートや日本美術、西洋美術などから刺激を得ています。一人で行くこともありますし、他の社員さんやパートナーさんを誘って行くこともあります。

「物を作って終わり」ではなく、見えないバトンを販売スタッフに渡す

これまでの仕事を通じて、印象に残っていることはありますか。

コロナ禍で一度生産がストップし、仕事をしたくてもできなかったときのこと。仕事が休みだったので、各店舗に出向いて販売スタッフに改めて挨拶をしたりコミュニケーションをとったりしたことが、結果として自分が変わるきっかけとなりました。大事なんですよ、物を作って終わりではないって。

 

たとえば今は端午の節句用の飾り皿を手掛けているのですが、少しでも気を抜いたり適当にしたりすると、ダイレクトに線に現れる。一つひとつの商品に対する愛情は、必ず受け手に伝わるという責任感を持って制作と向き合っています。
そして、この愛を僕の代わりにお客様に直接届けてくれるのが、販売スタッフのみなさんです。作り手から販売スタッフ、そしてお客様へ商品が渡るというのは、愛情という見えないバトンを手渡しをしているよう。
だからこそ販売スタッフとのコミニュケーションは大切ですし、今でも休みの日にはできるだけ各店に顔を出すように心掛けています。

販売スタッフと会話している木戸口善夫さん

伝統工芸は挑戦なくして存続なし、失敗することが成功への近道

最後に、入社を検討する人へのメッセージをお願いします。

創造工芸工房では定番品だけでなく、創造性を発揮した新しいものづくりが求められています。伝統工芸は挑戦なくして守っていくことはできません。「箔一」の歴史が、金沢工芸品の歴史を作っているといっても過言ではなく、だからこそ「自分たちが新しい歴史を作っていくんだ」という気概を持った人にこそ入社してもらいたいと思います。


僕は漆出身ですが、ものづくりが好きな人であればガラスや日本画など、どんな経歴であってもOK。これまでの知識や技術、センスを融合して、金箔を使ってアウトプットするのが仕事です。手仕事は、失敗の経験値が高いことこそが大切。失敗こそ近道ですから、臆せず、縮こまらずに、チャレンジしていく精神を持った人をお待ちしています。

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